2003ベンチャー隊 夢の屋久島プロジェクト
■期間:2003年8月4日〜12日 8泊9日 ■場所:屋久島一帯
■野営地:矢筈 (yahazu) キャンプ場 ■緊急避難場所:一湊漁業組合研修センター
■スカウト:青山 武・太田 純・勝田洋光・細野祐基
■全日程同行および報告者:ベンチャー隊 勝田信司 副長
JR名古屋駅 6:50「ひかり」出発。11:05博多到着。JR「つばめ」14:52鹿児島到着。高速船トッピィーで鹿児島港〜種子島経由〜18:30安房港到着。19:15キャンプサイト到着。
地図 斉藤
←お世話になった斉藤美雪さん

○野営地には勝田副長が 14:40 に空路で先に到着。現地斉藤さんの出迎えを受ける。
○斉藤さんの家からトラックを借り、野営地へ備品を移動。(15:20)
○管理者へ使用連絡(町振興課)荷物の仕分け、ターフ張り(18:00終了)
○安房港でベンチャースカウトと合流、キャンプサイトへ移動。すぐに設営開始。
設営休憩 サイト完成 キャンプサイトは、一湊半島の中程の小高い場所にあり、東西に海が見える。
炊事場は20m程、トイレは50mの距離。サイトはやや傾斜があるが、水はけのよい広場。サイトとしての条件はやや良といった感じ。
今回ベンチャー隊が屋久島に着いた安房港は、野営地から約45分の距離にあるので移動に時間がかかった。(宮乃浦港では移動時間約10分)
現地でお世話を受けた斉藤夫妻には、とても親身になって協力していただいた。
初日は大変蒸し暑く、サイトでの夜は疲れもあったがあまり寝付けられなく、これが屋久島の気候かと観念した。


5日(火) 屋久島探検 6:00起床 8:45活動地下見・サイトまわり整備清掃 13:30水泳訓練 16:30夕食準備 22:00消灯
夜明 反省会
←左/テントサイトから見た夜明け
←右/毎晩その日の反省会とレポート書き


ダイビングポイント・登山道を下見。キャンプサイトの炊事場とトイレが大変汚れていた。定期的に清掃されているが奉仕も兼ねて清掃活動を行った。
キャンプサイトから海水浴場までわずか5分のロケーションのため水泳訓練の環境は最適である。また無料のシャワー施設もあり風呂代わりにも使用可能である。
台風が接近しているため7日に予定していた登山を明日に変更。
キャンプサイトから町のある宮乃浦まで車で約10分。買い出しにはAコープとショッピングストアー(わいわい)の2軒が適当。その他ホームセンターや夜11時まで営業のコンビニがある。
食料保存用の氷の確保が重要。当初、かち割り氷(300円)を購入していたが費用がかかるため様々探した結果、漁協で100円の自販機があることがわかり以後これを利用。(量は100円でアイスボックス1杯程度ある)
キャンプサイトにヤクシカやヤクサルが出没する。そのため夜間の食料やゴミ類の処理や保管には十分配慮することが必要。

6日(水) 縄文杉見学登山 4:00起床 5:00白谷雲水峡登山口へ出発 16:00荒川登山口側下山 20:00合流 21:00キャンプサイト撤収 22:30斉藤家に一時避難 23:00漁港センターへ避難。
縄文杉
←縄文杉

台風の接近は予想されたがこの日1日なら大丈夫との判断(斉藤さんと相談)で登山の日程をスキューバと入れ替えた。(5日午後判断スキューバとの入れ替え調整のためインストラクターの中島さんに連絡しOKをもらう)
当日の弁当(昼食は、朝、ご飯をたきおにぎりに携帯食は他にカロリーメイト・飴・水・スポーツ飲料)。
登山して1時間後、細野が原始林コース内で嘔吐したためリーダーの青山が引率して下りてきた。勝田副長が同コースを40分後に登山していたので途中この2人に出会い細野を預かって登山口に戻った。青山には先行している2人に合流するよう指示。(分かれてから20〜30分経過していたと思われる)細野の様態は顔面蒼白で脂汗が出ていた。足下がふらつき下山の判断は正しかったと考える。勝田副長は細野にこのままここで回復を待ち近くを散策しながら3人の下山を迎えるかキャンプサイトに戻って休むかの判断を求めたことろ本人は残ると決断したため勝田副長のみ食料の買い出しとスキューバダイビングの調整のために一度キャンプサイトに戻った。
午前11時20分、勝田より縄文杉に到着した旨の連絡が入る。青山はまだ出会っていない。
下山予定時刻の午後5時になっても3名は戻らず。午後6時を過ぎ何かあったのではないかと不安感が募る。もしかして怪我等で下山が遅れた場合を考えもうしばらく待つこととした。またもう1パーティー下山しておらず、そのパーティーが予約したタクシーの運転手とともに午後7時まで待つ。日没後、これ以上の下山は無理かどうかを判断するため再度付近の山に登り山中での歩行が困難なことを確認し他へ下山したのではないかと考え(豪雨のため、白谷側の沢が増水して荒川側にコースを変えることがあるとタクシー運転手から聞いていた)携帯電話がつながる場所まで戻り、連絡をとったところ4時過ぎに荒川側へ無事下山していることが判明、キャンプサイトで落ち合うことを連絡した。
白谷白雲峡 白谷白雲峡 今回の計画変更の最大の原因は、白谷側から縄文杉コース往復するには体力的にきついと言うことをあまり認識していなかったことに加え、細野の体調不良によりリーダー青山の疲労が大きかったことがあげられる。また台風10号の影響で午後から天候が変化し雨が激しくなり白谷コース内の歩行が難しくなったことである。 さらに登山口で携帯電話が使用できないとの認識が甘く、荒川登山口へ下山後の連絡がとれなかったことがあげられる。
サイトへ戻ったが、風が強くテントが飛ぶ恐れがあり斉藤さんの計らいで漁協の研修センターに一時避難することになり撤収を行った。物資の移動は明日早朝行うこととした。

←白谷白雲峡

7日(木) 台風10号のため避難、施設見学 5:30起床 6:00備品等撤去と移動 8:30撤去備品等の整備 11:00屋久島環境文化センター見学 13:00テント等乾燥作業 18:00大浦温泉入浴 22:00消灯。
ジオラマ 杉標本 ←環境文化村センターに展示してある屋久島ジオラマと屋久杉の標本(樹齢1000年以上)
早朝漁協のトラックを借り、昨夜まとめた装備品を一旦センター内へ移動させた。台風10号接近のためセンター内で過ごしていたが午前中一時風雨が弱まったため宮乃浦にある屋久島環境文化村センターを訪問した。午後から風雨とも激しくなったため漁協センター内でぬれたテントの乾燥作業や清掃を行った。
風雨の中、一湊近くにある大浦温泉に汗を流しに行った。

8日(金) 台風10号のため避難、センター内生活 7:00起床、館内清掃・レポート作成(終日館内で過ごす) 22:00消灯。
ジオラマ
←島内の台風よけ。スカウトも板の打ち付け作業を手伝った。
屋久島の台風のすさまじさに驚いた。外へ出ると激しい風で1歩も歩けず飛ばされそうになった。しかし地元の人のお話では今回は直撃ではないのでさほどではないとのこと。(実感としてはものすごい風雨だったが)
一湊近くの滝がこの大雨ですごい流れになっていた。ふだんはほとんど流れていないそうだ。センター内は大きな畳の広間や本格的な厨房、板の間の講堂等があり食事の準備備品の整理・テントの乾燥・睡眠等十分な環境が整い大変ありがたかった。けれど台風による湿気や畳のダニには閉口した。 これまでのたまった疲労の回復とレポート書きなどこの2日間は有効な時間となった。今後の計画の見直しを検討。

9日(土) キャンプサイトの設営、島内サイクリング 5:00起床 6:00キャンプサイト設営 9:00島内サイクリング 17:30水泳訓練  21:30消灯。
サイクリング サイクリング
台風の影響も収まり早朝再度キャンプサイトの設営を行う。備品等の移動には再び漁協のトラックを拝借した。
観光センターでレンタサイクルを借り、予定通り安房先の千尋の滝まで往復70kmのサイクリングを実施。風が強かったがなんとか全員完走できた。
海水浴
サイクリングの汗を流すため一湊海水浴場へ。あいにく遊泳禁止だったが海の家の改修作業をしているおばさんの配慮でシャワー施設を使用させてもらった。

←波の高い海水浴場での水泳訓練?(台風の余波)

10日(日) スキューバダイビング 6:30起床 8:00ホテル集合 9:00第1回開始 13:45第2回開始 18:00営火準備 20:00営火 23:00消灯。
スキューバ 当初の予定を2回も変更した(台風接近のため日程変更)スキューバダイビングをインストラクターの中島さんのご厚意で実施することができた。スキューバは午前1回午後1回行われた。午前は基本的な技術のマスター、午後は実際に深い所までツアーに出る計画だったが1回目からいきなり深い海の中の散歩が実現した。1回目が終わり青山が頭の痛みから2回目をリタイヤ(原因は呼吸が浅く酸欠状態が起こったため)。2回目では途中(開始10分後)細野が耳抜きができなくリタイヤ。 しかし青い海と珊瑚礁、様々な種類の魚と全員スキューバの魅力に取り付かれた。
夕方はお世話になった斉藤家に帰省中の家族の子供たち(10名)や斉藤美雪さん、同じサイトで出会った賀田さん(大府市出身で3ヶ月間スーパーカブで沖縄や屋久島、九州各地を一人で旅している女性)を招いてキャンプファイヤーを行った。
営火 営火 前もってリハーサルを行い、やる気満々だった。子供達も大乗りで十分楽しんでもらえたと思う。

消灯後,明日の撤収作業に向けて自主的に装備品のパッキングを行った。

11日(月) 屋久島世界遺産センター・屋久杉自然館・屋久島うみがめ館 5:00起床 5:30撤収作業 9:00島内施設見学 13:00撤収作業 15:00島内施設見学 16:00水泳訓練 18:00撤営作業 22:00一時避難 24:00テントサイトに戻る。
世界遺産センター
←屋久島世界遺産センターでの研修

早朝から撤去作業を行う予定だったが未明からの暴風雨でテントから1歩も外へ出られず、おまけにテント内まで水浸しになってしまった。 仕方なく雨がやむまでテント内に残り9時に予定していた島内の施設見学をとりあえず実施。昼に再度キャンプサイドに戻りテントや荷物の乾燥作業を行った。前夜ある程度装備品の仕分けやパッキングがしてあったので今回の雨の影響を最小限に区止めることができた。(「備えよ常に」の教えが生きた場面だった)
その後、前浜のうみがめ館を訪問してから再び最終の撤去作業を行った。
撤営 避難 夜、雨が不規則に降り出した。この日はタープ内で一晩徹夜しながらレポートをまとめる計画だったけれど午後10時過ぎには土砂振りとなったため一時、一湊の海水浴場の屋根のある施設に移動し風雨を凌いだ。24時、風雨が収まったため再びサイトに戻りブルーシートの上で一夜を過ごした。
←あまりの風雨に海水浴場へ避難。ほとんど不良のお兄さん?

12日(火) 帰名 5:00起床 7:00来た時と同じルートで出発 19:00名古屋到着 19:30解散
帰名
午前5時、ターフと残りの物品の最終撤収作業を行う。心配された雨も何とか出発までには降らず、7時発のトッピーで屋久島を離れた。 勝田副長はその後サイトに戻り荷物送りの手続きと斉藤さんへの挨拶を済ませ午後11時の飛行機で屋久島を後にした。 撤収作業で一番難航したのは期間内に出たゴミ類のパッキングである。分別してとって置いたゴミ類を完全にパック詰めにし名古屋に送ったが何か仕事をするたびに新たなゴミが発生し、なかなかパッキングができなかった。また生ゴミは当初乾燥させて燃やすはずだったが鹿や猿の出没のためそれができなかった。
名古屋着 解散 名古屋駅では千羽隊長の出迎えを受け全員元気に帰名することができ簡単な解散式を行った。
【プロジェクト全体を通して】
全体の感想
縄文杉登山でのトラブルに始まり、台風騒動と予定していたことが予定通りできないことへの対応が今回のプロジェクトを象徴している。
縄文杉登山の反省では、考えの甘さが日ごろの経験不足からきていることを反省していた。またチーム行動と個人行動のどちらをベンチャー隊は優先したらよいかなど11日の反省会では真剣な討議が見られた。
さらにこうした計画変更に対して今回地元の斉藤夫妻の援助に救われたことが大きく、斉藤夫妻への感謝の気持ちを全員が感じることができた。また地元の人々の温かい言葉がけや助力に接し日ごろ忘れかけている人情に触れることもできた。
環境キャンプについて
環境キャンプが今回のプロジェクトの大きなテーマであった。自分たちの出したゴミの処理、各地の清掃奉仕、さらに地球規模の課題として提示されている世界遺産のありようなど、屋久島をプロジェクトに選んだことは大きな収穫だった。
環境保全の意識はキャンプ期間中隊員の行動に随時見られ(分別意識・再利用の意識地球にダメージを与えない行動の意識・環境問題を捉えようとする調査意識等)実践を伴った形で実行されていた。
アウトドアスポーツ体験について
登山・サイクリング・スキューバダイビングと日ごろ体験できないアウトドアスポーツを体験する機会に恵まれ、自分自身の力の限界や努力する気持ち、自然に対する畏敬の念、新たな課題の発見など、隊員にとって大きな教えをもたらしてくれたと感じた。特に自分の力の限界を生死の境で感じる経験は(登山とスキューバ)大変貴重なものであったと思う。
今後は歩くだけでなく登山の経験も増やしたいとの思いは、そうした体験から生まれたものである。
チームワークについて
青山をリーダーに4人で絶えず一つの目標に向かって行動することは9日間互いを干渉し合うことになり大変つらいものである。けれどもケンカらしいケンカもなくお互い力を出し合って、しかも楽しく生活できた。
登山や台風やスキューバでは、それぞれぎりぎりのところで対応を迫られると自然に本心が表に出てきてしまうものである。そうした中でもチームワークを乱すことなく着実に行動できたことは大変価値があったと思う。
反省会では、ベンチャーは基本的には個人のプロジェクトなのだから同じ所へ行くにしても別々に考え行動をしたり、装備も個人持ちにした方がよいのでは、という意見も出されたが、どんな場合でもやはり協力することは必要(登山での細野の場合や雨天時での撤収作業など)になり、協力してこそ初めて味わえる感動(キャンプファイヤー時・サイクリングでの完走・行き帰りの道中での出来事等)もある。ボーイスカウト活動はチームが基本だとあらためて感じた。
屋久島について
世界遺産の屋久島に実際訪れ、見て・触れて・感じたことは様々な発見をもたらせた。
これまでの下学習では分からなかった事実(歴史的・文化的・社会的な足跡が豊富なことや驚き、施設の規模や内容の素晴らしさ、まさに世界規模)を目の当たりにして知ったことは、さらにプロジェクトへの興味関心を高めたと感じた。
台風に出合ったことや、屋久島の山や海に出合った事(自然環境の素晴らしさ)も想像以上に大きな体験として新たな意欲をわき起こさせた。(全員が是非また行きたいと言っていた)
その他
・今回、現地で斉藤さんの自家用車をお借りできたので費用面でも行動面でも大変助かった。
また、物資の移動にトラックまでお借りでき作業の短縮に大いに役立てることができた。こうしたバックアップが今回のプロジェクトの成功のカギでもあった。心から感謝したい。そしてこの斉藤夫妻との出会いをこれからも継続させていきたい。
・経費に関して今回最も課題だと感じたのは物資の輸送費である。事前に十分検討精選できなかったので使わないものまで持ち込むこととなった。また、もしかしたら必要になるかも知れないと考え持ち込んだ物も多数あり、長期のキャンプで非常時に必要な最低限の物資(装備品)については今回の経験が次回に生きることとになると思う。